すこしながいはなし

SNSに書くには少し長い話

魅惑の逆輸入CDが催事で売られていたはなし

20世紀の終わり頃、台湾からの逆輸入CDの催事というものがあった
後に「音楽レコードの還流防止措置」
ja.wikipedia.org
として問題となる、「その国内でのみ(日本より)安価で流通を認める正規版」ではなく、まごうことなき「海賊版」であった
とはいえこの時は日本と台湾に著作権に関わるに条約が存在していなかったため、この逆輸入CDについて著作権者がどうこう言えなかったのである
それでも業者の建前として、日本と台湾に著作権的に条約がありませんよー。このCDを販売するのは違法ではないんですよー。とCDラックに手書きで表示されているのが常であった

当時住んでいた千葉県のスーパーでは、3か月に1回くらいの間隔で催事スペースの一角で行われていた。1997年ごろには1週間くらいの期間があったが、徐々に短くなり、1999年ごろには2日間の開催もあった
産業をとりまく状況が状況だけに、いろいろやりたい放題なCDが多数あり、見る分には楽しいものだった

私が見た感じ、その魅惑のCDは大体以下のように区分できた。もっとも20年以上前のことであり記録もしておらず、自分の記憶もあてに出来ないで書いていることはご了承願いたい。なお、自分の音楽の興味に偏りがあるため、すべてを網羅している訳ではないことも付け加えておく

・勝手にシングルCD集
当時の日本のシングルCDは8cm版が主流であったが、全世界的には少数派であったらしい(参考:8センチCD - Wikipedia )。そのため早く新譜を聞きたい人向けに、最新のシングル4~5枚あたりまとめたものが売られていた。カップリング曲やカラオケバージョン*1もきちんと網羅していた
扱われるミュージシャンは当時ヒットチャートで上位にあることが多かった人たちが多かったが、結構「音楽好き」な人が好むバンドもあって驚いた

・勝手にベストアルバム
こちらは最近のシングルのメイン曲は確実に入れるが、カップリング曲はそれなり、場合によってはアルバム曲も入っている*2。そういうわけで勝手にベストアルバム。という言い方になる
こちらはヒットチャートで上位にいるミュージシャンだけではなく、ある程度活動歴が長い、固定ファンを持っている歌謡曲・演歌の人も見かけた
このタイプにはおまけのCDが付いていることもあった。とはいえ女性ミュージシャンというくくりで、作風が違う人のおまけをつけても次の販促に効果があるのだろうか?

・勝手に抱き合わせCD
いかにも!な魅惑の逆輸入CDである。複数のミュージシャンのシングルを2~3枚収録しているという代物である。2組のミュージシャンが圧倒的で3組以上は稀であった
ミュージシャンの組み合わせはさまざまで、「割と両方の音楽を聴きそうだな~」というもの、「両方聴く人って少なくないか?」というもの、「どうしてこの組み合わせにした」というもの、いずれもあった
個人的には見るにはこのタイプのCDが好きだった。ファン層やその時の日本のヒットチャートを反映していたからだ。日本では???という組み合わせではあっても、売れる見込みのない抱き合わせCDをむやみに作る可能性は高くないように見えたからだ
ちなみに私がよくネタとして話すのは「『rumania montevideo』と『19』の抱き合わせCD」。日本ではどう考えてもこの2組をコンピレーションさせる発想は浮かばない

ちなみに、魅惑のCDの販売比率は
勝手にシングルCD集:勝手にベストアルバム:勝手に抱き合わせCD:それ以外=2.5:1.5:5:1
という感じであった
ジャケットに関しては収録元CDシングルのコラージュが圧倒的多数を占めた(なお「それ以外」は(略))。日本のシングル盤ジャケットを載せるという不文律があったのか、視認性の問題なのかは不明である

かくも見ている分には面白いCDであったが、私は購入することがなかった
当時は1Kに一人暮らしで部屋の面積に余力がないのもあった。なにより学生で結構CDの貸し借りを同級生でやっていた。値段も1500~2000円あたりで、バイトをしていない身にはネタとしても買うにはちょっと厳しかった。当時のアパートの近くにはなかったが、まだレンタルCDの商売が成り立つくらいには、新譜を借りても安くつくくらいであった
もう少し後の年代まで続いていれば、もしかすると……とも思うが、当時の記録を残しておかなかったのは、今思うともったいない

*1:この当時、レコード会社によるが、ボーカルを抜いたカラオケバージョンと呼ばれる音源も収録されていた

*2:CMに採用されたり、ドラマの挿入歌として採用されるものが多かった気がする